足の付け根にある股関節が脱臼してしまうことがあります。こうなるとうまく歩けなくなる為、初めは手で元に戻し固定することを試みますが、股関節周囲の靭帯が酷く損傷している場合や骨に異常がある場合は手術が必要になります。
動物種によりますが、基本的には外的要因(交通事故や落下など)で脱臼は起こることが多いです。ただし犬やハムスター、ジリスなどの齧歯類の一部では元々股関節が浅いことや、股関節の変形をともなうことで収まりが悪いことがあり、そういった場合は加齢とともに筋力や靭帯が弱ることで脱臼を繰り返すことになります。
脱臼してしまった場合に行う治療としては大きく分けて、非観血的な方法と観血的な方法があります。非観血的な方法としては脱臼を整復したのちに包帯で固定を試みます。脱臼が腹側か背側かで固定方法は異なりますが、半数で再脱臼するリスクがあります。観血的な方法としては手術を行います。当院では股関節に変形が少ない場合は人工靭帯で関節を再建するトグルピン法を、股関節の変形が酷い場合は再脱臼のリスクが大きい為、大腿骨頭切除術を提案することが多いです。


トグルピン法で整復を行ったトイプードルの症例です。トグルピン法の利点としては術後の機能が回復が早く、元の状態に近い運動機能の回復が見込めます。欠点としては人工靭帯が関節が安定化する前に切れてしまうと再脱臼するリスクがあります。


続いては大腿骨頭切除術を行ったリチャードソンジリスの症例です。大腿骨頭切除術では完全な機能回復は難しく、元の6-7割の機能維持に留まります。小型犬やエキゾチック動物等、体重の軽い個体であれば日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。
患者様ごとの股関節の状態で適切な方法を提案させていただきます。人工股関節を設置する必要がある場合は、本州の実施可能な病院を紹介させていただくこともございます。