当院では犬の前十字靭帯断裂に対して表題のような術式を使用して骨切り矯正手術を行っています。この手術の特徴は断裂した靭帯をもとに戻すのではなく、大腿骨から脛骨にかかる力の方向を変えることで前十字靭帯がなくとも歩行できるようにするところです。以前は断裂した靭帯の代わりとなる特殊な糸を使用してのラテラルスーチャー(LFS)などの関節外法が主流でしたが、術後の再断裂や将来的な慢性関節炎のリスクから今ではTPLOが世界的には主流となってきています。


2kgの小型犬から50kgの大型犬まで適用は幅広く、入院期間も従来の方法に比べると短くて済みます。当院では手術の翌日から三日以内に退院することがほとんどです。術後の安静期間も関節外法に比べて短く済むため、やんちゃで安静が困難な場合や運動量が多い犬種に適しています。
LFSでは術後長期に渡り体内に糸が残るため、一年以上経ってから慢性関節炎を生じ、再度歩きづらさが残る結果となってしまった苦い経験があります。その点、TPLOでは生体反応が起こりづらいプレートを使用する上に将来的には骨癒合するため、プレートを除去することも可能です。


上の写真では術後2ヶ月で骨癒合が進み骨切り部分が見えなくなってきています。希望があれば術後3-4ヶ月でプレートを抜去します。ただしプレートを体内に残したままでも問題になることは無いため、そのままにすることがほとんどです。
足をびっこする、足を痛がっているがなかなか治らない等、前十字靭帯の損傷は見過ごされていることも多いため、気になる方はご相談ください。